【水無月から文月へ】
小さい頃からよく言われたのが「6 月生まれなの?雨で鬱陶しい月ね」だった。 もちろん 6 月のイメージであって、私のことを鬱陶しいと形容しているわけではないのだ が、ちょっと寂しい気がしたものだった。今なら科学的データを挙げて、東京都の降雨量の多 い月は 9 月と 10 月だと言えるのだが、いや、そんなことを言ったところで始まらないから、 やっぱり寂しく笑って過ごすだろう。
ふーん、やっぱり水の多い月なんだ。田んぼには水が張られ、オタマジャクシが泳ぎ回り、 アメンボがスイスイと浮かぶ田んぼ。小さな生き物に命を与える水。そう思うと嬉しい水、 雨、梅雨だ。鬱陶しいと思う大人の方が鬱陶しいわ!と思いながら、小さい私はゲンゴロウや ミズスマシを眺めていたものだった。
梅雨の花なら断然アジサイだろう。 アジサイを英語で hydrangea と呼ぶ。 発音はカタカナ表 記で「ハイドレインジァ」と言ったら良いかな。名前が hydr から始まる言葉は「水」関連だか ら、アジサイの英語名はかなり科学的なのかもしれない。
このアジサイ、漢字では紫陽花と書くのだけど、実は花びらがハラハラと落ちて枯れる花で はない。ずっと同じ姿で、少しずつ枯れていくのだ。丁度、ドライフラワーのような姿になっ て。
紫陽花は、雨の中誰かを待って、そのまま梅雨が明けたら、誰も紫陽花のことなんか忘れち ゃって、夏の日差しに喜ぶ子供たちの声を聞きながら、立ち枯れていく。そして、私の記憶の 中の紫陽花は、今でも裏木戸の横に静かに佇んでいる。子供の頃、でんでん虫を探して、手の 平に乗せたりしていた幼い私の側に咲いていた紫陽花。雨が降れば降るほど、その青色ー紫色 ーピンク色を濃くした紫陽花を思い出す私の生まれ月ももう過ぎた。
今日から 7 月だ。
自らを散らすことなく紫陽花は来ぬ人待つか裏木戸の陰 / リリコイ
*****リリコイ*****
素敵な6月です。紫陽花は最も好きな花です。水無月とは水の月という意味でしたか、初めて知りました。気持ちのほぐれるエッセイですね。
返信削除福岡空港より。
コメントをありがとうございます。
削除紫陽花が雨に濡れている様は、本当に恵みの雨だなと思いますね。
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