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  「戦禍は消えぬ」

 ロシアがウクライナに侵攻したのは2022年2月下旬なので、年が明けたらその侵攻は2年にも及ぶ。長引くほどに世界の関心度が下がってきた感があったところ、2023年10月初旬にイスラム組織・ハマスのイスラエルへの奇襲攻撃によって軍事衝突が始まった。この軍事衝突、あれよあれよという間に、ジェノサイド《特定の集団(国民・民族・人種・宗教など)の全部または一部を破壊すること》化してきた。イスラエルに肩入れしていたアメリカも、今では声を潜めている。

 ICRC(赤十字国際員会)によると、世界に存在する武力紛争の数は、2022年12月現在で100を超えているそうだ。とにかくきな臭い地球であることは確か。

 1932年、国際連盟が、理論物理学者であるアインシュタインに「今の文明においてもっとも大事だと思われる事柄を、いちばん意見を交換したい相手と書簡を交わしてください」 という依頼を出したら、 彼が選んだ相手は、心理学者で精神科医であるフロイトだった。そして内容は、「人はなぜ戦争をするのか」であった。それは、翻訳された書籍となったので、未読の人にはネタバレとならないよう、かいつまむと、「タナトスとエロスという対になった人間の欲動からなるのではないか」とフロイトは書簡にまとめている。

 心理学を解説するには筆者は無力であるのでその深さ広さを語れないが、ヒトには、愛するが故に、占領や独占欲が増し、支配や凌辱を重ねやがて破壊したくなると言っていた師がいた。その典型的な例として、熱烈なファンによるストーカー行為がエスカレートしての惨殺などがある。少し古い事件だが、ジョン・レノンの殺害事件を振り返ってみる。一部の報道では、ジョン・レノンの熱狂的なファンだと報道された殺害犯のマーク・チャップマンも、レノンにサインを断られたことが引き金となって殺害に及んだとか。真相は犯人にしか解らないことながらタナトスとエロスの相関関係を考えると頷ける。

 ジョン・レノンと言えば『イマジン』。1971年に発表され一躍アメリカの『ビルボード』誌を邁進した楽曲だ。歌詞の一部、特に2番を引用する。(和訳は筆者による)

Imagine there's no countries

It isn't hard to do

Nothing to kill or die for

And no religion too

Imagine all the people

Living life in peace


想像してみて 国なんて無いってことを

そんなに難しくないでしょう

殺す理由も死ぬ理由も無く

そして宗教も無いんだ

だからみんな想像してよ

平和のもとに生きるってことを


 国家や宗教や所有欲によって起こる対立や憎悪を無意味なものとし、曲のユートピア的な世界を思い描き共有すれば世界は変わる、と訴えかけている。どうだろうか?所有欲や国境も無く、宗教も無いことを現代の人は受け入れられるだろうか?受け入れられなくてもこの歌詞に力があることは理解できるのではないだろうか。

 人は何かしら他人より秀でている部分が自分にあったら嬉しい。それが財産や名誉、権威と呼ばれるパワーなど。隣の家より広ければ自慢だし、1円でも多くを所持していれば安心だ。寂しい欲だが誰にでも思い当たる話だ。

 日本が昔、近隣のアジア諸国を侵略したことがある。満州、韓国、南樺太などを植民地として、挙句に真珠湾攻撃で第二次世界大戦へと突入した。このことを日本の現代史の授業では詳しく教えないらしい。歴史は変えられないから、自国の不始末を教えたくないというのか。反省も何もあったものではない。それが証拠に、日本がアメリカと戦争を知らない若い子の多いことに呆れる。(文末にこれに因んだ拙歌掲載)

 私たちはハワイという特異な土地で生活している。1868年、約150人の日本人が労働者としてハワイに上陸し、「元年者」と呼ばれ築き上げた苦労も文化も名誉も、真珠湾への奇襲攻撃で泡と化したハワイ州だ。多くは書かなくてもここに生活している日本人なら先達の無念さは理解し合えるだろう。

 今、筆者の手元にある「ホノルル・スター・ブルテン」の1941年12月7日付の号外の画像をアップする。インクが掠れ判読困難ながらも、文字は残酷に「爆弾で殺された」と綴っている。



 「戦争なんて言うからいけない。あれは人殺しだ!」と言った人がいた。その通りだと思う。こんな話題も苦しいが、一度は書かなくてはと思っていた。そして、私の拙いエッセイと短歌も、今回で終わりにしようと思う。毎回読んで下さりありがとうございました。

 おっと最後にもう一度ザ・ビートルズの話題へ。

 ジョン・レノンが亡くなった1980年から53年後の2023年11月2日(日本時間)に、最後の新曲が突如世界中に発信された。タイトルは「ナウ アンド ゼン」(Now and Then)だ。 レノンが79年に遺したピアノの弾き語りのデモ音源が蘇った。歌の内容はラブソングだが、今の世界情勢を見たら、レノンはどう思っただろうか。


「うそマジで!」口を覆いて*JKは史実知らさるパールハーバー (*女子高生のこと)

 見学の後に「敗戦記念日」と上書きされる夏休みかな

                           

                        *****リリコイ*****


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