「ショックから学んだ歩きの人生」
私たちの生活は日々便利になってきてる分、知らず知らずに体力が落ちてきているのは紛れもない事実ですね。「運動やウォーキングで改善を」と言っても、その目的や方法、体の症状など百人百様です。「立つ・歩き」が基本の中で、「歩き方の悪さ」から病気を引き起こしかねないとも言われている通り、自己流で培った長い悪しき習慣の結果が、ある日突然私に襲いかかってきたのでした。
前は海、後ろは山という環境の中で育ったせいか、若い頃の私は歩くことがちっとも苦ではありませんでした。時間ができると5~6時間以上も平気で歩き、同行した友だちなどは2度と一緒に歩きたがりませんでした。当然、歩き過ぎから筋を痛めたり腿が張ったり突如足が突っ張ったりしても、我慢してるといつの間にかそれらの症状が治まっていたのでなすがままにしていたのでした。
もう70歳に手が届くころだったでしょうか。突如「青天霹靂のショック」に見舞われたのでした。その頃私は3,000メートル級の山登りをたまに仲間と登っては楽しんでいました。ハワイ住まいが決まり日本の山とも暫しのお別れと、秋半ばの暖かい日、山好きの家族と東京近郊にある1300メートルの山頂でおにぎりを頬張りながら景色を満喫したのです。下山は1時間もかからずで、山頂の周りをゆっくり散策して降り始めて10分位した頃、突然に膝がガクン!と音がしたと思った途端、太ももの後ろが殴られたような痛みとともに、ふにゃっと体が崩れ、一歩も歩けなくなってしまったのです。「嘘っ、どうして、どうして?」自分に問いかけ、立ち上がろうとしても膝上に全く力が入りません。前を降りていた家族が心配して「今日中に戻ればいいんだし、も少し休んでゆっくり行こう」と気遣ってくれる分、健脚な家族を足止めさせて申し訳ないと、再び足腰に力を入れ立とうとしても膝がクニャッとして全く立てないのでした。這ってでも立たなければと思い、両脇に生えていた背丈のある草をてこにして必死の思いでやっと立てたのが1時間経った頃。しかし右足を一歩前に出すか出さないうちにフニャと体が倒れる始末で何回も挑戦したけれどもまるでダメ、そのまましゃがみこんでしまったのです。「最悪!山の救急隊へSOS」とまで諦めかけていました。私の有様を見ていた夫婦が、私のバックパックを息子に預け、二人で私の両手を両脇から支え立たせると体を引きずるようにして一歩、一歩また一歩と根気よく降り始めてくれたのです。登り口の道路脇の車にたどり着いた時はもう黄昏で、何と6時間弱もかかっていました。
原因不明のままドクターも行かず1カ月ちょっとで通常に歩けるようになっものの、お尻の下の筋肉と後ろ側の腿の筋力の張りが全く無くなってしまったのです。一番大きな痛手は、大好きなゴルフのスイングで足腰の踏ん張りが全然できなくなった上に、歩きながら周りの景色を楽しんだり眺めようとすると体が横に揺れてふらついたり、地面を踏みしめている感触が全然感じられなくなっていた事です。勿論少しでも筋力を、と1日のうち数時間をセルフトレーニング、ウォーキングにも力を入れてたのですが、悲しいかな回復の兆しが少しも感じられず「年を取ると誰で似た現象になりやすくなる」と慰められながらも納得が出来ず、とうとう今日までに至ってしまいました。
ハワイでは2020年から始まったCOVID-19騒動。一時はロックダウンや外出制限までされリタイアー近かった相方の失業で「1時間ちょっとの朝の散歩」と「三食昼寝付きの1日」に付き合っている内に、ストレッチやウォーキングの時間が極端に少なくなっていたのでした。足腰の踏ん張りや衰えが以前にもましてひどくなってゆき、足でしっかり地面を踏みしめている感じが無いまま「何とかしなければ」と気ばかりが焦っていました。今までの私は「自分の健康法は自力で鍛える」をモットーとし、軽いマラソンから競歩、歩きを楽しみ、スポーツジムとか何とか教室へは足を向けようと考えた事すらありませんでした。
とは言うものの、自分に合った歩き方で長く歩くためには「衰えてくる筋肉や関節を柔らか
くする補助運動の力を取り入れたりする工夫もあってもいいのかな」と考えた事もあります。丁度そんな折、室内でも気軽にできる運動器具の説明会があり、そのチラシを持ち帰ったのです。座ったままで、筋力トレーニングと有酸素運動ができ、器具はベルト2本と電気器具と水だけ。ベルトの部分に水を付け、手入れも1週間に1回水洗いか洗濯機にといたって簡単。歩けなくなってくる不安と焦りがあったからこそ食指が動いたのでしょう。早速体験、即入手し扱い方に沿って実行し始めたのです。初めは、説明書の通りベルトを両膝上に巻き20分位から始めたのですが物足りず、2日目からは両太腿にし、スクワットと有酸素運動を合わせて1時間20分の時間をかけてトライしてみました。
4~5日経った朝夕の散歩時、意識的に横を見たり上を見上げながら歩いてみたら、よろけもせず靴底が地面をしっかりとらえ、腰下のふらつきが無くスムーズに歩けたのにはびっくり、俄然、歩き方が勢いづいてきました。左右後方を見回しては、ふらつきの極端に少なくなったのを体が自覚し、ポパイならぬ腿の筋肉が盛り上がってきたような錯覚すら抱いたのですから。補助器具も「継続は力なり」で手入れも習慣化してしまえば面倒でない分、心の隙間に「部屋で運動しているんだから毎日歩かなくてもいいんだよ」と悪魔の囁きが差し込んでくるようになりました。今はその誘惑に負けず頼らず、ハワイの自然を自分の足で、自分らしく楽しんで、「歩き」をより良いものに変えていく、そんな人生でありたいと切に願っている今日この頃です。
K/和子
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