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【Valley of Fireに魅せられて】

 ラスベガスに移住してほぼ半年近く。ここに暮らす開拓者末裔にとっての憩いの場は「レイク・ミッド」や「フーバー・ダム」でなく、車でわずか1時間で行ける「レッドロック・キャニオン」が人気だそうです。ところが、同じく1時間近くにある「ヴァレー・オブ・ファイアー」(火の谷)へはあまり足を向けないと聞かされていました。どうしてでしょう? 

 


アメリカで一番乾燥しているネバタ州の、特に「火の谷」とか「魔の谷」呼ばれて人々から恐れられていた「ヴァレー・オブ・ファイアー」は、昔からスペインの探検隊や合衆国の探検隊・冒険者なども容易に近寄らせず、それでもなお強行突破した強者たちでも最後は悲惨な結末を遂げたとか。その子孫が多く暮らすラスベガスでは、その言い伝えを恐怖と畏怖心で今日も頑なに信じている人々が多いからだとの事でした。

 ところが、何事にも好奇心だけは旺盛な私と相棒は、その話を聞かされれば聞かされるほど心を掻き立てられ、華氏105度を超えるある週末、日焼け止めを顔だけでなく身体中に塗りたくって行ってみる事にしたのです。日本人の探検隊だ!

 ラスベガスの郊外を抜けるとガラリと景観が様変わり。ゾクゾクしてきました。開発しようが無いほどの荒涼とした白っぽい砂漠が無限に広がっている荒地です。「Valley of Fire」の看板が見え始めて、左折して数分走った頃から、アップダウンの舗装道路の両側が大型の船で上下を激しく揺られているような感覚で景色が浮き沈み、すると突然前方の景色が一変。これは一体なに? 炎が燃え盛っているような真っ赤な岩壁と奇怪な岩の数々にびっくり。畏怖心どころかその美しさにすっかり圧倒されてしまいました。何とも美しいのです。

 午前10時半過ぎ、ゲートの入り口で地図を渡され、はやる心を押さえて地図をチェックしてすぐに行動開始。先ず、丘陵へと延びる専用道路沿いにあるポイント「Mouse's Tank」(野生のシカ)エリア。ここでも岩の赤と空の青の言葉に尽くせないコントラストに目を奪われました。期待が膨らみます。次は「Rainbow Vista」。ここからは「ヴァレー・オブ・ファイアー」全体の地形を見渡せる感じで、虹のようなグラデーションが見事です。真っ赤な岩と黒々とした岩のコントラストにも圧倒される思いでした。探検隊はどの辺で果てたのでしょうか。

 車窓からの景色は、まるで太古の恐竜時代を思わせる奇岩の擬態岩が赤かったり琥珀色、時にはピンクだったりして全てがシャッターチャンス。期待にワクワクしながら次のポイントの「Fire Wave」。大自然の中の絶景で、地層が間近に感じられ、渦を巻く赤と白の縞模様が美しく何とも不思議な感覚にとらわれました。

 いくつかのビューポイント近くから歩いて半キロや2キロ位のところに先住民が描いた岩絵や住居も見られるらしいのですが、今回は下見のつもりだったのでトレイルは次回にしました。絶対に次回も来てやるぞ。こんなに素敵な場所を一度で諦めるには勿体ないでしょう。

 楽しみは次回に取っておいて、今日はこの辺でラスベガスに戻ろうか。車をUターンして


戻る途中、興奮冷めやらぬ気持ちで景色を名残惜しく眺めていたら、突然車が急ブレーキ。何事かと思えば、これまた嬉しいプレゼント。野生の鹿の家族が目の前の岩の上にいるではないですか。しかも父親らしき大きな鹿が私たちを見定めるようにジーとこちらを見ているのです。数少ない後続車や対向車もエンジンを止め、鹿をビックリさせないよう窓からカメラを向けています。

 相棒も車から降りて、岩伝いにゆっくり移動していく鹿の家族連れにシャッターを。鹿と出会った幸運を、降りた人々と「ラッキー!」とこぶしをぶつけ合い喜び合ったのです。

                            K/和子 

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