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 「バスは鳴く」

 オアフ島で運行している公共バスがある。わずか一社だ。そのバス停とバス停の距離が物凄く近い。

 バスが走り出して、ギアチェンジをする間もなく次のバス停なので、エンジンも消化不良というか欲求不満を起こしやしないかと心配してしまう。

 車の構造には疎いが、エンジンルームに入ったガソリンは、ガガーッと燃えたいのではと気が気じゃない。それくらい近い。

 なので、バスを待ち待ち、次のバス停に向けて歩き出しても、バスを逃すことはなさそうだ。そうやってバス停からバス停へと歩けば、いつの間にか目的地に着きそうだけど、未だ試したことはない。いや、バスを使ったことは30年近くないと思う。

 そのバス、一台で走っているものと、二台が連結されて走っているのとがある。連結部分は、昔の電車の接続部分の蛇腹と同じような素材だ。


 初めて見た時は電車?と思ったほどだ。一度なんか、三台繋がったのを見た。

 てことは、その三台繋がっているバスの中を歩けば、先端は目的地だったりするのではないか? バス停間が近いんだもの、この島をその連結バスでグルッと囲めば、今建設中の高架鉄道システムなんて要らないじゃないの?

と思うけど、そう思う人は居そうで居ない。

 そのバスは、人の乗り降りに合わせて車高が変わる。ドライバーが変えてくれる。

その時の機械音があって、ちょっと秋の虫のようだ。カネタタキという虫の音に似ている。

朝、まだ明けやらないうちに、その虫の音が「ピッ、ピッ、ピッ、ピッー」と聞こえてくる。そして、遠くのバス停で鳴って、近くのバス停でも鳴って、過ぎ去った方角からも虫の音が聴こえる。そうだ、バス停が近いんだった。

バスの鳴く音を聴きながら私は二度寝する。

 秋深し

https://youtu.be/3Orf4vubEQQ

注:カネタタキのカネとは、雅楽で使われる鉦鼓(しょうこ)のこと。

                        リリコイ

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