白銀のロッキーで温水プール
カナダ・ケベック州(東部)の大都市であるモントリオールからカナダ・アルバータ州(西部)にある小さな町ジャスパー行の夜行バスに乗り、数時間たったころ足元からしんしんとした冷気が全身に沁みわたって「うっ、寒~っ」と目覚めた。
一晩にしてバスから見渡す眺めは限りなく真っ白でした。そんな初冬の様相をもって、ロッキー山脈を訪れる人が必ず立ち寄り、憩いの町と言われるバンフが私を迎え入れてくれたのです。
かつてインディアン達は、カナディアン・ロッキーを「神のいるところ」として恐れ、ここに豊かな自然の恵みがある事に気がつかなかったとか。しかし、灰褐色の岩肌を見せる三千メートル級の山々の、シロップをまぶしたような美しさ、神秘的な青さをたたえた湖、自然の織りなす数々の演出に、ここを訪れる人々は思わず感嘆の声を上げずにはいられないでしょう。何処にいてもロッキーの峰々が覆いかぶさっているバンフの町を私は早々探索してみました。
太いメインストリートの両脇が唯一の商店街で、建物もせいぜい2階建てどまり。おとぎ話から飛び出したような可愛らしい造りである。山小屋風の洒落たレストランやお土産店が、こじんまりと落ち着いたムードを醸し出しているのも、文明に慣らされた都会人にとってはのびやかな解放感と不思議な感動を与えてくれる風景になっているようでした。
緑のシーズンであれば、ロッキーの自然と戯れ、黄昏の町をさまよい、バンフに住む人々の明るい表情に接しのんびり散策するのも素敵かもしれません。また、白銀の世界であれば、試みるべきは当然スキー。不得手だが『雪のロッキーに滑る』という土産話の種にと、ホテルの主人の忠告をよそに郊外の小さなスキー場に来たもののオープン前で断念。
ところが近くに、勝手に動物たちが病気を治しに来たという場所に温水プールがあったのです。「真冬でも泳げる」というので、スキーヤーの訪れる前の静かなひと時を土地のファミリーたちと一緒にアイスクリームをほおばりながら、アウトドア―のプールに身を沈めました。
気の遠くなるような果てしない大自然に抱かれている安堵感に満たされていると、我が物顔に地球にのさばっている人間の存在感の、何とちっぽけな事か!! この表情豊かな自然と共存している町・バンフを起点に壮大な自然のパノラマは、北に広がるジャスパーの町に及ぶ300キロにわたって夢のような旅を味わわせてくれたのでし
た。
た。
カナディアン・ロッキーの侵しがたい美しさと圧倒される壮大さにただただため息をつき、一つ一つの町がもつ様々な表現に旅人の胸はいつも熱いもので一杯になるのです。のんびりバスの旅を楽しむうち、私はカナダという国がすっかり好きになってしまいました。
K/和子
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