会員の独り言

 懐かしのカナディアン・ロッキーに再び

 冷気が全身に沁みわたるかっての懐かしの街カナダのバンフが、ハワイからの私達を迎え入れてくれました。2016年9月の初めの頃の話です。

出発2~3日前から「レストランに行くのに、セーターもう一着入れようよ」「荷物は極力少なめで、必要なら買えばいいじゃない?」。荷物を増やしたがりの彼と、最小限で十分の私とのやり取りのあげく、ハイキング用リュック一つと手荷物用の小さなスーツケース、後はダウンジャケット手持ちというほとんど着の身着のままに近い格好での出発でした。

  バンフ(写真・左側)は予想外の寒さで、早速ジャケットの助けを。ネットで予約したホテルは中心地から20分程歩いたところにありました。清楚でこじんまりした感じで早々チェックイン。膝の悪い彼は、街の中心まで意外と時間がかかるのにげんなりしていましたが、自分で予約した手前あきらめたようでした。一休みして、渋る彼を煽てながら、はやる気持ちで早速街並みの散策に。41年前には無かったスーパーやショッピングビル内のかわいらしい店舗が沢山あったのにはびっくり。さすが観光地だけあるな~と感心してしまいました。別に買いものをしたい訳ではなかったので、2,3のお店に入っては「ハーイ!」と笑顔で言葉をかわし、だんだん不機嫌になる彼をなだめながら渋々一旦ホテルに戻ったのです。

侵しがたい美しさと壮大なカナディアン・ロッキーを彼に是非一度見せたくて今回の旅行を計画。彼にとっては初めてのアメリカ本土だけに、平気な顔をしていてもだいぶ緊張していたようで、機内でもよく眠れなかったようでした。疲れと膝の不調で、峰々が覆いかぶさっているバンフの素晴らしさを堪能する余裕が無かったのでしょう。今度は彼をホテルにおいて黄昏の迫る街に再び飛び出し、今度は一人ゆっくりと目についた横道を探索、あっち覗きこっち覗いては行き交う地元の人達との挨拶を心ゆくまで楽しんだのです。彼の疲れ具合からして夕食はおそらく部屋でするだろうと予感がしていたので、7時過ぎには早々と閉めかかっている小売店などを通り過ぎ7時半ごろスーパーへ。もう閉店の看板が出ており8時閉店とか、慌てて食料品を調達。初日にしては味気ない夕食でしたが、旅先でのレストランやお店の閉店時間には『要注意!』を教えられました。

 翌朝には彼の体調も回復し、予約してあった日本人ツアーガイドの案内で貸し切りの1日が始まりました。バンフ・レイクルイーズ(写真・右下)の宝石のような湖に吸い込まれるように見とれ、彼は三脚を出してシャッターを押すために岩の上をあちこち歩き、膝の痛みは何処へやらの感で動き回り、愛くるしいリスとの出会いに我々の気分もはしゃぎっぱなしでした。

氷河が解けて流れている澄み渡った色合いのボウ滝川は、マリリン・モンロウ主演『帰らざる河』のロケ地になったとか。その川を渡ろうとしている野生の大鹿に我々は興奮し、彼は2000ミリの望遠レンズに変え、撮るのに夢中。移動中も鹿の母娘に挨拶、大リスの巣作りに感心したり、とロッキーの自然の演出に驚かされながら、伸びやかな解放感で気分は膨らみっぱなしでした。

3000メートル級のバンフの街が見下ろせるサルファー山にゴンドラで約8分、展望カフェもありパノラマのロッキー山脈も堪能し、リスや鹿、ビーバーが住んで朝日や夕日で湖面が赤く染まるバーミリオン・レイクの色合いの、怖いような自然の成せる技にも感動でした。たまたまタイミング良く、バンフを走り抜ける貨物列車を見かけその列車の何と長いことか。二人で夕食をかけ懸命に数えたものの結局、4つの目でも何両編成か数え切れなかったとは驚きでした。

バンフで最大、建物の大きさやデザインに厳しい制限があるというバンフ・スプリングホテル。その華麗な室内や美しい庭園歩きを楽しみ、夕食は、期待の名物バッファロー料理店に。ラフなウエイターのジョークに笑いながら席に案内されました。地ビールを飲みながら、お待ちかねのバッファロー料理がうやうやしく運ばれてきました。ところがです。口にした途端、彼は苦虫をかみつぶした顔に。「どうしたの、だめっ?」「ソースで臭みが。もう出よう」「入ったばかりよ、もう少し我慢できない?」「君だけいたら」と、さっさと席を立ってしまったのです。やむなくお金だけ払って外へ出たものの、最後はスーパーのお弁当という冴えない夕食に。

けれどバンフ最後の晩餐。サーモン料理店での彼は、勧められたワインとサーモンに舌鼓を打ち大満足、チップを大いに弾んでいましたっけ。しかも、私に内緒で持参したお気に入りのセーターを着て「持ってきて良かったよ」とご機嫌。3泊4日の夢のような懐かしのバンフとの再会に別れを告げ、次の都市・ヴァンクーヴァ―へと向かったのです。


(K/Kazuko )

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